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2024年の営業について

槍ヶ岳山荘グループの山小屋を利用される方は必ずご一読ください。

アンケートの結果を受けて③  〜キャンセル料について〜

 先日のブログに引き続き、1月に実施したアンケートの補足説明を行います。これは、アンケートの結果を受けて情報の発信が不足していると感じられたことをきちんと説明する為に書いているものです。今回はキャンセル料について書きたいと思います。あくまで私の個人的な考えですので、お読み頂ける方はその旨ご了承下さい。

アンケートの結果は、こちらから確認できます。

※このアンケートは2023年1月に槍ヶ岳山荘グループが実施し、1,614人もの登山者の方々にご回答頂いたものです。このアンケートには別途自由記述欄があり、こちらも885人の方にご回答頂いております。

前回の宿泊料金に関する記事はこちらをご確認ください。
前々回の宿泊予約制に関する記事はこちらです。


【キャンセル料について】

 まず申し上げたいのは、私たちはキャンセル料収入そのものをアテにしている訳ではなく、適正に予約及びキャンセル対応をして頂きたいだけです。自然を相手にした商売ですので、キャンセルが多く発生することは承知しておりますし、キャンセル料惜しさの無理な登山を強いる気は毛頭ありません。ですが、リスクを負うのは山小屋ばかりでは無く、予約をする方にも責任をもって頂きたいということです。

 

 毎年、山小屋のシーズンが終わると冬の間に何度も地域の山小屋経営者が集まり、情報共有や課題解決の為に会議を開きます。その際に、ここ数年何度も話題に挙がっているのが、「予約キャンセルに対する苦悩」です。予約が殺到し受付開始日には数分で満室となる日で、実際にどれだけ天気が良くコンディションが整っていても、当日には必ず空きが出ます。個人の都合やコロナ禍でしたので体調不良など、様々な事情でキャンセルになることは分かりますが、それにしても多くのキャンセルが入る訳です。槍ヶ岳山荘では、予約制として以降、当日実際に満室となった日は1日もありません。それはなぜか。複数の山小屋への重複予約、同じ小屋に多くの日程で予約を取りコンディションが良い日を選んでくる方、同一パーティでの複数予約のキャンセル忘れなど、一部の無責任な方々の迷惑行為があるからです。

 こうした迷惑行為さえなければ、キャンセル料は無くてもいいと私は考えますが、実際には難しい状況です。とはいえ、街のホテルや旅館のキャンセル規定のように例えば当日10割、前日8割、3日前5割、7日前2割といったキャンセル料設定は高過ぎるでしょう。クレカで事前決済を行い、キャンセル料はクレカの規定に合わせるが悪天候等の止むを得ない場合は免除すれば良い、というご意見も多く頂きました。確かに、山小屋で高額なキャンセル料設定をするのであれば、免除をするケースの判断は必要になるでしょう。しかし、これには以下の通り多くの課題があります。

・止むを得ないコンディションであると誰が判断するのか、その判断基準が曖昧であること。

・キャンセル料が掛かるかどうかが当日のコンディション次第であれば、事前のキャンセル処理に対してキャンセル料が掛かるかどうかが当日まで分からないこと。

・毎日キャンセル料を取るかどうかの判断をするのは現場での負担が大きいこと。

・天候以外の止むを得ない事情(例えば前日に怪我をしたとか)を考慮するとなると、その都度キャンセル料をもらうのかどうかを判断して処理することになるので、より一層現場の負荷が増えること。

・そもそもキャンセル料をもらう/もらわないを人ごとに処理でき、尚且つ山小屋での利用に適している予約(決済)システムは私の知る限りでは存在せず、作り込むには相当なコストが掛かるであろうこと。

 以上より、私個人としての現時点の見解では、予約金の導入がベターと考えています。予約時に一定の料金を事前決済でクレカ等でお支払い頂き、入金時点で予約確定とします。この予約金は悪天候等のコンディション不良でも基本的には返金しないことを前提とし、それを踏まえた上で金額の設定を行います。予約金惜しさに悪天候でも強行する人がいないようなある程度低めの金額設定が望ましいでしょう。この予約金という対応であれば、もらう/もらわないの判断や処理も原則として必要なく、予約に関わる迷惑行為も牽制できます。システム上の対応もそれほど難しくはないでしょう。

 もちろん、この予約金にも課題は数多くあります。予約金にしてもキャンセル料にしても、基本的には山小屋ごとに異なるルールではなく地域で共通したルールが望ましく、山小屋同士の金額設定も含めた共通認識・共通システムを作らなくてはいけないこと、山小屋によって通信環境に差異があり、WEB予約も導入していない小屋が現時点で数多くあること、予約金はどうせ帰って来ないのだからとキャンセル処理をしない人が出てくるであろうこと、電話予約の場合はどうするのか、予約後一定期間はキャンセルした場合に返金処理をする猶予期間を設けるのか、それがシステム上可能なのか、などが挙げられるでしょうか。これらの課題を考慮すると今年からすぐに導入という訳にはいきません。

 

 以上を踏まえ、槍ヶ岳山荘グループの2023年度の営業方針として、下記の文章をホームページ上に掲載しております。

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キャンセル期限は前日18時までとさせて頂きます。それ以降のキャンセルは一人あたり7,000円のキャンセル料を貰い受けますのでご了承ください。但し、急な天候悪化や体調不良等のやむを得ない場合は事情を勘案して対応致しますので、まずは現地にご一報ください。

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 金額はアンケートも参考にして宿泊料金(1泊2食)の半額とし、キャンセル期限は翌日の天気予報が更新されるであろう時間帯にしています。これ以上遅くなると、電話対応するスタッフの就業時間が長くなり現場に負担がかかります。また、きちんとした理由があればそのキャンセル料免除の対応も行いますので、キャンセル料惜しさの強行登山も抑えられます。

 ただ、このキャンセル料設定は消極的な対応と言えるかもしれません。既述の迷惑行為に対する牽制としては弱く、「事情を勘案する」という対応はどうしても現場に負荷が掛かります。それでも、リスクを追うのは山小屋ばかりではなく利用者にも責任をもって予約をして頂きたい、このことを多くの方は既にご認識頂いておりますが、一部のそうではない方々に向けてメッセージとして発信していくには必要な措置と考えています。今後は予約金制度の導入を念頭に置き、継続的に検討していきたいと思います。

 キャンセル料の問題は、多くの山小屋が頭を悩ませているところです。ここに書かせて頂いたことは現時点での見解であり、今後も継続的に研究していきたいと思います。先日実施したアンケートのように、利用者の皆さんのご意見をお聞かせ頂くことがあるかもしれませんので、その際はご協力をお願いします。

 今回はここまでです。次回はテント泊について書きたいと思います。