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2024年の営業について

槍ヶ岳山荘グループの山小屋を利用される方は必ずご一読ください。

アンケートの結果を受けて②  〜宿泊料金について〜

 先日のブログに引き続き、1月に実施したアンケートの補足説明を行います。これは、アンケートの結果を受けて情報の発信が不足していると感じられたことをきちんと説明する為に書いているものです。今回は宿泊料金について書きたいと思います。あくまで私の個人的な考えですので、お読み頂ける方はその旨ご了承下さい。


アンケートの結果は、こちらから確認できます。

※このアンケートは2023年1月に槍ヶ岳山荘グループが実施し、1,614人もの登山者の方々にご回答頂いたものです。このアンケートには別途自由記述欄があり、こちらも885人の方にご回答頂いております。

前回の予約制に関する記事はこちらをご確認ください。


【宿泊料金について】

 コロナ禍により、そもそも宿泊を伴う山域では登山者が減少しましたが、さらに山小屋は感染症対策として受け入れ人数を減らした為、売上が大きく減少しました。これにより宿泊料金を値上げせざるを得なくなりましたが、値上げの理由はこれだけではありません。物価の上昇に伴う仕入価格の上昇、最低賃金のアップや社会保険料の負担増等による人件費等の増加、原油価格の高騰など、山小屋業界に限った話ではありませんが、経営環境は厳しさを増すばかりであり、価格への転嫁はいずれ必要な状況でした。

 また、山小屋特有の問題と言えば、ヘリによる物資輸送(物輸)料金の値上がりがあります。山小屋を運営するにあたり最も高額なコストの1つがヘリの物輸料金ですので、その値上がりは非常に大きな問題です。この問題は昨今報じられておりご存知の方もいらっしゃいますが、誤解の無いよう説明致します。

 ヘリによる山小屋への物輸料金は、長いこと大きな価格の変動がありませんでした。これは山小屋とヘリ会社との関係性や、ヘリ会社の企業努力に依るところが大きかったと思いますが、山小屋の料金も今まではそれほど大きな値上げがなかったことと無関係ではありません。しかし、いつしかヘリ会社にとって山小屋の物資輸送は収益性の低い事業となってしまった訳です。航空業界全体が深刻な人手不足となっている中、天候が安定せず見通しの立ちにくい山での作業は非効率でもあります。また、山小屋への物輸は技術的にも難しく、パイロットの中でも一部の限られた方にしか出来ません。したがって、ヘリ会社がより収益性の高い公共事業や、安定した収益を見込める防災ヘリ等に経営資源を集中するのは自然な流れと言えますし、社内外に説明のつく範囲で山小屋の物輸料金を値上げすることは致し方ないことでしょう。現在、物輸料金は段階的に引き上げられている最中ですが、それでも私たち山小屋としては事業を継続して頂いていることに感謝している次第です。

 ヘリの物輸料金の値上げ、物価の上昇、人件費の増加といった問題と、コロナ禍がタイミングとして重なった為、宿泊料金値上げの理由について対外的な説明としては最も分かりやすいコロナ禍の影響に終始したことは山小屋側の責任かもしれませんが、現在の料金は多くの要素を勘案した結果導き出されています。

 したがって、もし従来の詰め込み型のスタイルに戻したとしても、かつての1万円を切るような宿泊料金に戻すことは出来ません。また、今回のアンケートにより、多少高くとも居住性を確保される方を選ぶ人が多いことが分かりました。既述の通り予約の柔軟性は検討していく必要はあるのかもしれませんが、感染症対策に関係なく、予約制で広さをとる現在のスタイルが今後も主流となるのではないでしょうか。もちろん、山小屋によっては異なる考えを持つ方もいるでしょうし、小屋の規模や構造、定員と料金の兼ね合いなどにより、居住性の確保といってもその度合いは小屋によって異なると思います。

 また、アンケートにより宿泊料金の変動制を想定以上に理解してくださる方が多いことが分かりました。山小屋ですので、街のホテルや旅館と同じようには出来ませんし、その必要もないと思います。ただ、一日の受け入れ人数に上限を設ける以上、特定日に集中することなく、平日や閑散期への誘導を行う必要はありますので、槍ヶ岳山荘グループとしては今後の検討課題とします。安ければ平日に人が集まる訳ではないでしょうし、現場での運用も負担が増えますので、諸々検証しながら決めていこうと思います。

  宿泊料金を上げた分、きちんとしたサービスで還元しなくてはいけない、私はそのように考え、従業員にもそう伝えてきました。価格に見合っているかどうかを決めるのは利用者ですが、自分たちが胸を張って利用者からその金額を頂戴できるようにならなくてはいけないと思います。その為に必要なことは、山小屋がリゾートホテルに生まれ変わることではありませんし、高いコストを掛けて贅沢品を山に持ち込むことではありません。まずは山小屋が担うべき役割をきちんと果たすことです。そして良い思い出だけを残して翌日出立して頂けるような、気持ちのこもった接客をすることや、山小屋の設備の中で出来る限りおいしい食事を提供すること等、基本的なことだと思います。現時点で槍ヶ岳山荘グループの山小屋に対しご不満を感じていらっしゃる方はいるかもしれませんが、従業員ともども精進していくことだけはお約束します。但し、これは登山者を「甘やかす」ことではありません。ルールやマナーを守らない方については、毅然とした態度で望むことも山小屋の責務と考えておりますので、その点はご理解ください。

 最後に、自由記述で「料金の値上げは理解できるが、子どもを連れた登山をするのが厳しくなった」というご意見も頂戴しました。槍ヶ岳山荘グループの山小屋は、その立地上それほど多くの家族連れが訪れる訳ではありませんが、子どもや若者が山に登らなくては日本の登山文化に未来はありません。2023年度の宿泊料金は既に公開しておりますが、小学生以下は6,000円割引き、中高生以下は3,000円割引きとさせて頂きます。後述しますが、大学生や高校生の山岳部・ワンダーフォーゲル部の活動を支援する為、大学生以下のテント泊はひとり1,000円と致します。

 今回はここまでです。今後、キャンセル料やテント泊について書いていきます。