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そして誰もいなくなった

どこかで見た構図
そういえば昔、アビーロードで轢かれそうになりました

こんにちは、スタッフ肥沼です。
“さよならだけが人生だ”
今朝、休暇で下界へ降りるスタッフ3人を見送る際、僕は笑顔の裏でそんな事を考えてました。
何故ならこれで槍ヶ岳山荘は僕1人のワンオペとなるからです。
深夜のコンビニ店員、あるいは南極に取り残されたタロとジロの気持ちが今ならすこし理解できる。
備蓄された燃料や物資を極限まで倹しくやれば11月まで1人で生き抜けるだろうか?
もし成功の暁にはJAXAやNASAからオファーでもきてしまうのではないか?
そんな不毛な空想に浸る。

人気がなくなると、とたんにあらゆるものが意味深に映りはじめる

節約のため発電機も切ると、いよいよ館内は一切の生命感のない空間となり、『遊星よりの物体X』のような薄暗い不気味さに覆われる。
秒針が勤勉に時を刻む音だけが響き、それがまた孤独感に味付けしてくれる。
平時、何気なく外でチュンチュンいってるイワヒバリが急に愛おしくなる。

とにかく何かをしていなくては・・

ひとまず付近の除雪に没頭。
投雪機のガナるようなエンジンの頼もしさに感動する。

果てなき氷の層との戦いも今日に限っては何故だか嬉しい

自分への賄い作りなど放棄し、しばらく作業していると、なにやら槍沢の彼方に、動く点が・・。

ただの飛蚊症かと思ったが、双眼鏡で確認すると、確かに人間だ。スゴイぞ、しかも2人!

思わず叫ぶ。
おそらく30年生きた中で最もデカい声だったろう。

やがて槍の肩へ登り詰めた彼らへ駆け寄ると、なんと休暇明けのスタッフ達でした(しらじらしい)。

おかえりなさい!
喜びと興奮を隠せない僕とは裏腹に、二人は実に素っ気なかった。

孤独を経たせいでいつもより甲斐甲斐しくなった僕は、まるで部活帰りの息子を迎え入れる母親のように、いそいそと野郎3人前の、チョット豪勢な夕食作りに励むのでした。
ちなみに本日は高曇りで、オマケに霞がかかってしまい、終日いい景色が取れませんでしたので昨日の夕暮れを貼ります。

撮影:スタッフ岡

条件が揃えば金沢市の沖合まで見えます。
昔、漁船の漁火らしきモノを見た事があります。
このロケーション。僕が独り占めするには余りにも雄大すぎる・・。
きっと感動とは、誰かと分かち合うものです。

以上、極めて異例な山荘ワンオペ体験(半日)でした。