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2024年の営業について

槍ヶ岳山荘グループの山小屋を利用される方は必ずご一読ください。

惜春3000m

ご無沙汰しております。
スタッフ肥沼です。
毎年、桜を横目に入山してきたのですが、
今年は開花が半月以上早かったため、桜にすら見送ってもらえず、シャバに別れを告げ、ヘリで稜線に放り出されました。

ランディング一番槍。
即アイゼンを履き、懐に温めた赤ラッカースプレーで簡易的なヘリポートとパイロットに遠近感を与えるためのマーキングを複数ヶ所、速やかに施す。
低酸素とアドレナリンで実はちょっとラリッっておりました(笑)


そこかしこで言われるように、今年は僕の知る約10年で最も積雪が少なく、気候変動への不安を感じました。
ただ、小屋開け作業は楽になるかといえばそうでもなく、“勤勉”を絵にして色を塗ったような杉山支配人の的確な采配の下、及第点をはるかに超えた怒涛の前倒し作業に追われております。
恐ろしく順調が故に、このまま突っ切れば再来月には小屋閉め作業まで終わるんじゃないかと一抹の不安を感じつつ(笑)、光を取り戻した館内や、掘り出しと復旧が進む設備をみると、ようやく自分の居場所に帰れたような、不思議な感覚になります。

社長に最前線を除雪させる小屋は珍しいと思われる(笑)
あまつさえ間違った場所を下3mも掘らせた僕を笑顔で許してくださるあたり、おそらく明君の器だろう。
除雪というより発掘という言葉の方がしっくりくる。
無駄を省き、ピンポイントで掘り当てなければならない。
無論、言うだけは容易い。

本日は槍沢・飛騨沢の2班に分かれ、旗竿立てに参りました。
僕は飛騨沢へ。相方は“登れるパティシエ”こと新人木村。

コック帽をメットに、ホイッパーをピッケルに持ち替え入山。
万が一、近い将来『手作り槍ヶ岳クッキー』なんて売品が世に出るなら、間違いなくこの男の仕業である。
なお菓子職人のイメージに反し、言動は辛辣。
道中で遭遇した猛禽類に追い回されるイワヒバリの一群。
雪渓上には羽が散乱していた。
無限に繰り返される生と死。
命懸けの戦いを安全圏から傍観する我々人間は、自然界において極めて異質な存在に思える。

2450m地点のシンボリックなダケカンバ、通称“宝の木”の下部まで70本立てました。

吸い込まれるような群青を仰ぎ
見渡す限りの大雪原にアイゼンを軋ませながら歩く。
職務とはいえ役得と呼ぶ他ない。
ニセ槍をバックに休憩。
数多の登山者達の安堵を失望に変えてきたであろう、尖塔を思わせる小ピーク。
しかし太古より屹立する彼にしてみれば、つい最近この巷にやってきた人間から勝手に疎まれるのはかなり不本意なはずである。

一方槍沢組はグリーンバンド下にある、こんもりとした丸山の下部まで旗竿を刺しました。
コンディションは飛騨沢より悪く、am8:00にも関わらず殺生から下は既にグザグザでした。
おまけにグリーンバンド付近の岩の露出が著しく、開業時には部分的に非常に歩きにくい状態の可能性もあります。

我々の入下山に際し、極力メンテしていこうと思います 。
槍沢担当、菊池。
赤銅色の精悍なツラになって帰ってきました(笑)
右の偉丈夫。

さて今日は小屋明け助っ人、森山さんの下山日でもありました。
体力、技術、経験に裏打ちされた的確な仕事ぶりには毎年、お世話になっております。
プロスキーヤーや救助隊を皮切りに、雪崩研究家や農家に至るまで、様々な知見と肩書きを持ち、この世界を渡り歩く彼に、僕は敬意を表すと共に、歩くスイスチャンプのような存在として頼りにしておりました。
また会いましょう。
ありがとうございました。

スコップを放り投げ、 思わず見とれる。
胸を打つ情景の前には、如何なる形容も虚飾に過ぎない。
歯根を震わせ、そんなことを考えておりました。

ボチボチ腰痛にプロポーズされそうな毎日ですが 、営業開始までもう少し。
早くも押し寄せる温泉と寿司への即物的な欲望をなだめつつ、粉骨砕身やっていこうと思います(泣)