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雨に唄えば

こんばんは。
勤勉な梅雨前線のおかげでロクに外にも出れず、心にまでカビが生えそうな日々を過ごしております。
しかしながらそんな中、寒雨に身を打たれながらもウチを目指してやって来てくださるお客様には頭が上がりません。ありがとうございます。
そんな方々にこそ北アの荘厳な景色を見て頂きたいのですが生憎、夏の足音はいまだ聞こえてきませんね。

例えばこんな景色。7月22日の夕焼け。
「ああ、来た甲斐があった」
と可能な限り思わせたい

さて本日は始業前、唐突に杉山支配人に召集されました。
『ワリーんだけどさ・・』
僕はこの言葉が彼の口から出ると、身構えます。
ロクな目に遭った試しがないのを経験的に知っているからです。
ちなみにこの切り出し方はここらで行き会う信州人が頻用する言い回しです。(当然ながら微塵にも悪いと思ってはいない。)
やはりその予感は当たり、ショーシャンクのクライマックスみたいな暴雨の中、先の群発地震で大きく崩れたテント場の補修に向かわされました。

開始数分でこれが一筋縄ではいかぬことを悟る。
そしてノコノコついてきたこと後悔する。

下界ならば職質必至のグッズ達を手に現場へ行くと、サイトのど真ん中にいくつもの落石が寝っ転がっておりました。
マンパワーでは転がすサイズではないので 、まずそれらにドリルで下穴を空け、クサビを打ち込んでぶち割り、崩落個所にそのまま組み込みます。

使ったのはセリ矢。
両サイドのパーツを下穴にセットし真ん中のクサビを打ち込み、徐々に亀裂を拡げていく。
どうやら紀元前からあるらしく、人類との付き合いが長い道具。
どうにもうまくハマらない時はタガネで斫る(はつる)
セットウを打ち込む腕がすぐにパンプする。
これを30年繰り返し隧道を掘りぬいた禅海を心底尊敬する。
あるもんで何とかする。
小屋番の美学、というか意地である
元地質屋の血が騒ぐらしく岩石と戯れている時の杉山さんは1番いい顔をしている。
無論、どんな天気でもだ。

何の華もない地道な作業です。
伝統を尊び、慎ましさを善とする我々小屋番は、あくまで地産地消、現地調達にこだわります(笑)
途中、写真を撮りに来たスタッフ山崎が
『エジプトのピラミッドづくりみたい・・』
とつぶやいてましたが。
おそらく当時の彼らの方がはるかに緻密にやっていたと思われる。

わけもわからず駆り出された18歳スタッフ菊池。
屋久島の高校を出てそのままここに来た。
しっかり者でやる気に満ちた彼を、なぜだか眩しくて僕は直視できない。

悪天の中、ひとまず形にはしました。
とはいえまだまだ要修繕箇所が残っており、継続的な手入れが必要です。
槍のテン場は40張り程度しかテントを許容できず、風向き等条件が厳しいのにも関わらず毎年多くの方に利用して頂いております。
そんな登山者の期待を裏切らぬよう弛まぬ整備をしていこうと思います。
以上、肥沼でした。ヘッキシ!