2026年の営業について
2026/10/07
長い登山を終えて山荘に到着したあと、楽しみの一つになるのが食事の時間です。
槍ヶ岳山荘では、今年から朝食・夕食ともにビュッフェ形式で食事を提供しています。
「山小屋の食事」と聞くと、決まった料理が一人前ずつ用意されるイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、槍ヶ岳山荘の食堂にはさまざまな料理が並び、その日の気分やお腹の空き具合に合わせて、好きなものを選んで楽しむことができます。
今回は、そんな標高約3,000mにある食堂のビュッフェと、それを支える厨房の裏側を、スタッフの目線からご紹介します。

夕食には、油淋鶏や上海風焼きそば、焼売などの食べ応えのある料理をはじめ、野菜の黒酢あん、大根キムチ、ザーサイ、サラダなどが並びます。
食事の最後には、フルーツ杏仁などのデザートも。
朝食には、焼きマスやだし巻き玉子、生姜の甘辛煮といった和食に加え、オムレツやウインナーなども用意しています。
「今日はたくさん歩いたから、しっかり食べたい」
「明日の行程に備えて、朝からエネルギーをつけたい」
そんな一人ひとりに合わせて食事を選べるのが、ビュッフェの良いところです。
何時間も歩いてたどり着いた標高3,000mの山の上。そこで温かい料理を選び、お腹いっぱい食べる時間も、登山の楽しみのひとつになればと思っています。
最初に料理を取る際は、皆さんに行き渡るよう、一部のメニューで個数を決めてお願いしています。ですが、おかわりはもちろん自由! 一度皆さんに行き渡ったあとは、好きな料理を好きなだけ楽しんでいただけます。

もちろん、ここは街中のレストランとは環境が大きく違います。
「食材が足りないから、ちょっと買いに行こう」ということはできません。
限られた食材や設備の中で、その日の宿泊人数に合わせて料理を準備していきます。
厨房ではコンベクションオーブンや蒸し器などを使い、食事の時間から逆算して調理を進めます。ビュッフェが始まってからも、料理の減り具合を見ながら補充する量やタイミングを調整し、できるだけ温かい状態で食べてもらえるようにしています。
食堂に料理が並んでしまえば、何気ない一皿に見えるかもしれません。
でも、その一皿を標高3,000mで毎日変わらず提供することも、山の上では当たり前ではありません。
今日も登ってきた皆さんに、山の上でしっかり食べてもらう。
そのために、毎日厨房では食事の時間に向けて準備を続けています。
槍ヶ岳を訪れるのは、日本からのお客様だけではありません。
シーズン中は世界各国から登山者が訪れ、食堂でもさまざまな言語が聞こえてきます。
また、アレルギーや食事制限などによって、食べられるものが一人ひとり違うこともあります。
そのため、食事制限のある方には食券などを確認しながら、食べられない食材や、ビュッフェの中で食べられる料理を一緒に確認しています。
必要に応じて、ベジ肉団子や野菜の寄せ揚げ、豆腐ハンバーグなど、別の料理をご案内することもあります。
海外からのお客様とは英語で確認することもあります。
料理を用意することだけでなく、「これは食べても大丈夫だろうか」という不安を少しでも減らして、安心して食事の時間を過ごしてもらうこと。
それも、私たち食堂スタッフの大切な仕事のひとつです。
厨房や食堂で働いていると、料理を作って終わりではありません。
何時間も山道を歩いてきたお客様が食堂に入り、お皿いっぱいに料理を取り、きれいに食べ終えて、またおかわりに来る。
そんな光景を毎日すぐ近くで見ることができます。
そして食事を終えたお客様から、
「おいしかったです」
と声をかけていただくことがあります。
ほんの一言ですが、厨房で準備してきた私たちにとっては、とてもうれしい言葉です。
山を歩いたあとの食事は、街で食べる同じ一皿とは少し違って感じられるのかもしれません。
疲れた身体で温かいものを食べ、お腹が満たされて、明日の山行に備える。
食事もまた、山で過ごす大切な時間のひとつだと思います。

槍ヶ岳の山頂から見る景色。
ここまで歩いてきた登山道。
山荘で迎える夕暮れや朝。
槍ヶ岳で過ごした時間には、きっといろいろな場面が思い出として残ると思います。
その中に、**「山の上で食べたご飯がおいしかった」**という記憶も残ってくれたら、食事を準備する私たちにとってこれほどうれしいことはありません。
槍ヶ岳山荘へお越しの際は、景色や登山だけでなく、ぜひ標高約3,000mの食卓も楽しんでみてください。
そして一日たくさん歩いたあとは、明日の山行に向けて、どうぞお腹いっぱい食べていってください。