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2025年の営業について

槍ヶ岳山荘グループの山小屋を利用される方は必ずご一読ください。

6月上旬、飛騨沢登山道

こんにちは、殺生ヒュッテ支配人です。

 私は奥飛騨に住んでいるため、新穂高~槍ヶ岳の行き来が多いです。飛騨側の登山道状況においては槍ヶ岳山荘さんに取り上げてもらうのがいいかなと思いますが、率直な方が伝わりやすいのと、槍ヶ岳山荘グループになった殺生ヒュッテ布教活動のため、今週上り下りした飛騨沢の登山道状況をこちらに示しておこうと思います。

白出沢を過ぎると本格的な登山道となります。槍平小屋手前300mぐらいまでは雪を踏む箇所もほとんどなくなりました。

滝谷

これからの時期、滝谷は1日雨が降ると渡渉困難な可能性があり、新穂高から槍ヶ岳の上山には数日の天気確認とダメな場合の計画変更の柔軟性はマストです。まだ橋も架橋されていません。

南沢

南沢を過ぎ、槍平小屋手前300mほどにある木道部分が現状ではほぼ雪に覆われている状態です。登りは迷わないと思いますが、下りで利用する際は南沢に至る登山道を見つけにくいかもしれないので注意が必要です。

槍平小屋。
営業開始は7月11日。

槍平小屋の横を登山道上に抜け、標高2000mぐらいからはぼちぼちというか一気に雪上歩行へとなってきます。

★☆★2000mから森林限界の2450m、通称「宝の木」と言われるダケカンバまでは、信州側の槍沢登山道とは異なり、雪切りや旗竿も立っていないので完全に自身でのルートファンディングが必要となります。トラバース箇所や雪の状況もあまりよくないので、技術的にも精神的にもそれなりのレベルが必要です。また、装備もキックステップのできる靴、チェーンスパイクではないしっかりとしたアイゼン、ピッケルが必要です。★☆★

また、この箇所においても登りは装備と技量があれば宝の木までは到達できると思いますが、下りはルーファイ並びにトラバースにより心が折れそうになり、飛騨沢本流まで下っていってしまう可能性が非常に高いです。焦りと装備不足はそこで滑落を誘発させると思いますので、槍沢ルートから槍ヶ岳へ上り、下りのみで初めて飛騨沢ルートを使う場合(特に朝方)は細心の注意が必要です。

2000m~宝の木までのトラバース区間

 標高2500mの森林限界を越えればあとは標高2900mまで雪渓の直登となります。晴れていればルートは問題ないかと思いますが、視界がきかないと一気に間違った方向へいってしまいます。この区間は旗竿を立ててありますが、この時期一雨来るとすぐに倒れてしまうのであてにできません。

 また、風が一気に強まるのも2700mぐらいからです。悪天時には体感温度はまだまだ氷点下に感じることや、強風により行動不能になる可能性がありますので注意が必要です。雨・強風・低温・無視界などで思っていたのと違う、となった時にはこの標高まで来ていても下った方がいいでしょう。2900mからは飛騨乗越まであと少しとなり、槍ヶ岳山荘まで夏道となります。

飛騨乗越到着!

ざっと2025年6月1週目から2週目の飛騨側登山道はこんな感じです。

6月は上部の雪の残り方と天気の不安定さ、それに伴った下部滝谷の渡渉問題、槍平小屋の準備中と飛騨側登山道の状態は飛躍的に悪いものとなります。登って来ても一晩雨が降れば上高地側に下山することになりますし、特に登ってきた信州側と同じような感覚で、下りだけ飛騨側を使おうというのは道迷いとスリップの恐れもあり、私としてはあまりおすすめできません。連日の晴れを狙い撃ちできて、土地勘があり、雪山も問題ないという方には静かで良い登山ができるかと思います。

本日より殺生ヒュッテ営業開始でもっとアピールすべきことはありますが、とりあえず昨日飛騨側から上がってきたので記しておきます。