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2024年の営業について

槍ヶ岳山荘グループの山小屋を利用される方は必ずご一読ください。

新たな取り組み

こんにちは。大天井ヒュッテです。
明日から秋の三連休ですが、初日の天候は芳しくない模様。
ただ、台風14号の進路が北アルプスまっしぐら!から少し南に進路を変えそうです。山小屋としては胸をなでおろすところではありますが、予想進路にあたる地域に被害が出ないことを祈るばかりです。
数年前、台風通過時に横尾~槍沢ロッヂに至る登山道に数えきれない風倒木が横たわり、その処理に数日かかったことが記憶に新しいところです。
そういった、登山道の維持管理も山小屋の重要な仕事の一つとなっています。
ただ、昨今の新型感染症や大雨等の自然災害による影響で山小屋が抱える負担が増しています。
そこでこのような取り組みが、明日9月18日~10月18日までの期間で実施されます。北アルプストレイルプログラム

この取り組みが一人でも多くの登山者に周知され、この先の未来にも北アルプスの素晴らしい自然を安全に楽しんで頂くために、皆さまのご協力をお願いいたします。

さて、話を無理くり変えますが、先日無理くり休みを頂戴して北鎌尾根へ偵察に行ってきました。
前支配人小池さんは何十年にもわたって、北鎌尾根を歩いては放置されたゴミの回収やフィックスロープの交換、北鎌尾根に入る登山者への啓蒙活動に尽力されてきました。私もその思いを継ぐべく、勉強も兼ねて約10年ぶりに行ってきた次第です。
10年ぶりといっても、大天井ヒュッテから貧乏沢を下降するのは初めてだったので、前日はドキドキしてよく眠れませんでした(笑)

貧乏沢入口
貧乏沢下部 つるつる岩に貼られたロープは健在(あくまでも補助!)
ロープに頼らずとも下りれます
貧乏沢を850m下って天上沢との出合い

天上沢から上流に進むと北鎌沢の出合いに到着。きれいに整地された、数張りのビバーク跡があります。

北鎌沢出合いのケルン
左俣・右俣分岐

この日は北鎌沢中間部まで水が流れていました。この一週間ほど前には更に上部でも水が流れていたと聞きました。
水の確保は重要な問題ですので、確実に取れる場所で確保しましょう。
また、誤って左俣を登り、進退窮まっての遭難事案も多いと聞きます。この合流地点から右俣を登り切れば北鎌のコルに出ます。

北鎌のコル
テント二張りほど張れそうなスペース

ここからが本番。独標基部までは登り下りを繰り返しますが、明瞭な踏み跡があります。この日はちょうど日が当たり、色づき始めたナナカマドがとても綺麗でした。

しばらく行くと目の前に独標がその姿を現します。

奥が独標(2899m)そこまでにビバーク可能な場所が数か所有り
独標基部

今回、私は独標基部から千丈沢側をトラバースするルートをとり、その途中から独標へ登りました。トラバースの始まりには、フィックスロープがありますが経年劣化と、岩肌との擦れによる毛羽立ちも目立ちます。むやみに荷重をかけないように!足元はザレてはいますが、しっかり足を置いていけばフィックスロープに頼らなくとも進むことができます。

独標から槍を望む

独標からは尾根を通して突き進みましたが、巻き道のトレースもあります。北鎌尾根のようなバリエーションルートには、決まったルートがあるわけではなく、登山者自身がルートを選び、進むことに魅力があり、それこそが重要になります。
トレースがあるから安全で正しいとは限りません。安全に歩みを進められたらそこがルートです。

千丈沢に北鎌尾根の影
天上沢側 草紅葉が綺麗です
シビレました
山頂直下のプレート 気を引き締めて最後の登り
歩いてきた道のりを振り返る
山頂の祠の脇に出ます

今回は天候に恵まれ、これといったトラブルもなく歩き通すことができました。
ただ、こんないい日はシーズンにそう多くはないと思います。
一にも二にも先ずは長時間行動し続ける体力。そして急な天候の悪化などの予期せぬトラブルにも冷静に対応できる能力・経験が必要です。
北鎌尾根は毎年、悲しい遭難事故が起こっている場所です。
この一稿が、安易に山に入る人の為ではなく、日ごろからトレーニングをつんで、自分の能力を過大評価せず、謙虚な気持ちで山に入ってチャレンジしている登山者の一助となれば幸いです。
今後北鎌尾根の山行計画がある方は、2018年の小池さんのブログも是非一読下さい。
7月18日 北鎌尾根