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今シーズンの営業は終了しました (2020.10.25更新)

秋の大晦日

久々の穂先。化粧までして出迎えてくれました。

どうも、槍ヶ岳ジャーナル肥沼です。
先の地震で傷んだ石垣の擁壁の構築の為しばらく岳沢小屋に、山荘より選りすぐりの余剰人員(笑)として投入されておりました。
親より先に死んだヤツは賽の河原で石をひたすら積まされる苦役を課されるそうですが、どういうワケか僕は死んでもないのに身骨砕いて石を積まされました。
よほど前世で悪さしたんでしょうか。
作業に目処が立ち、先日2週ぶりに山荘へ戻ったところ環境の激変に舌を巻きました。

慣れ親しんだ足場もバキバキに凍り、さながら別天地に。


辺りは目が傷むほど真っ白となり、半月ぶりに帰った寝床の室温はマイナス5℃に成り果て、久々に会う仲間の反応もどこか氷点下でした。
様々なものが冷え込む一方で、小屋閉め作業は佳境を迎えており、そこかしこで響き渡る電動ドライバの銃撃音の応酬や、鈍器の打音が忙しなさに味付してくれます。
雪を纏い、僕らと同じく冬支度を始めた稜線の山々はそれまでとは打って変わり、どこか無機的で生物を拒絶するように厳しさを増します。
だからこそ拝むことのできる白く険峻な穂先は、荘厳でありながらどこか神秘的で、しばしば作業の手を止め見惚れます。しんがりの如く最後までここに残れる役得でしょうか。

テーブルでさえも荒々しく変貌。


あたかも春の逆再生を演じる僕らの生活も、以前は難なく出来たコトが途端に命がけの仕事になったり、液体の凍結をはじめとする、この時期ならではの苦労や、順繰りにやっていく設備や通用口の閉鎖も手伝い、暮らしはより簡素で不便なモノになっていきます。しかし所作のいちいちに面倒が付きまとうのもまた、シーズン末期の風情とすら思えます。

爆風の飛騨側。雪片の散弾を受けながら
空のドラム缶は25kg。
土壇場で重量超過など起こそうものなら恥ずかし過ぎて来季これない(笑)
計算は必死で行う。


昨日、最後の荷上げを行いました。
来季用の燃料備蓄と越冬させない資材の荷下げの為です。

全部で5便。朝いちでセカセカ作った大きな下げ荷は上高地から約8分でやってくるヘリによっていかにも重たそうに吊り上げられ、爆音とともに彼方へ去っていきました。さらに次便では何の用事かウチから常念小屋まで1分ほどで飛んでいきました。
僕らは明日、数時間かけて下りるというのに・・(笑)

凍てついた窓枠から覗く常念。


さて今年は新型コロナに促され、営業形態を大幅に変えました。
初の完全予約制の導入に伴う7月1日の電話ラッシュは未だに記憶に新しく、夕方フロント女性スタッフの舌がバカになり、虚空を見つめ憔悴していたのを鮮明に覚えております(無論、かける側の苦労も察するに余りありますが)。
それ以外におきましても宿泊許容人数を4分の1に落とし、日に数度、定時に館内を消毒してまわる等々の対策に奔走した結果、今年は変な名前の薬剤に詳しくなったり、飲んだ酒より噴霧したアルコールの方が遥かに多く、潔癖症という名のアルコール依存症になりかけました(笑)
とはいえ急場しのぎの対応で、お客様に多少のストレスをかけてしまったのは事実で、来期はそれらを改善しつつ、もう少しまともな営業が出来ればと切に思います。

ところで、以前どこかで春の入山は『小屋番の正月』という言葉を聞きました。
なるほどと思いつつ、では秋の下山は大晦日とするならば、残りの月日は何にあたるのでしょうか。
僕らは半年に1年を凝縮したような生活ですが、山小屋が終わっても僕らの生活は続きます。
最後となりますが、本年も槍ヶ岳、ひいては北アルプスに足を運んでくださったお客様はもちろんのこと、官民の救助隊や業者さん達、そして同業者の皆様、大変お世話になりまして、誠にありがとうございました。
ではまた春の正月で(笑)

それまで皆さんお元気で。